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事業承継の進め方⑦ 金融知識3 過剰債務の整理と連帯保証

こんにちは。所長の山本誉です。

最近は、既存案件に加えて、新規案件のお話などをいただき、このご時世に、とてもありがたく感じております。

そのため、多少「寝不足気味」ですが、心身はとても充実しています。

みなさん、コロナに負けず、頑張りましょう!



さて、今回も、事業承継にあたって、後継者に要求される「金融知識」についての続きです。

金融知識の中でも、事業継続のためには必ず知っておかなければならない、

「一般的な過剰債務の整理手法」と「連帯保証」について説明したいと思います。



7.一般的な過剰債務の整理手法


過剰な債務があって、借入金の返済が困難になった場合の、一般的な過剰債務の整理は、

以下のようにして対応します。


① 各金融機関に「条件変更(リスケ)」の依頼書を出して、取り急ぎ、返済を当面猶予して

  もらう。


② 返済を猶予してもらっている間に、合実計画にもとづく「経営改善計画書」を策定する。

  ・ 既存事業の利益・資金向上策(経費削減、不要資産の売却、売上向上策など)を検討

    する。

  ・ 既存事業の利益だけでは経営改善が困難な場合、既存事業に派生する事業や新規事

    業を行うことも検討する。


③ 上記②の検討結果を踏まえて、各金融機関に「経営改善計画書」の合意をとりつける。


④ 経営改善計画を実行する。定期的に各金融機関に計画と実績の状況を報告する。


⑤ なお、現状では、合実計画の基準を満たすことができない場合や、外部環境がどのように

   変化するか予測できない場合には、経営改善計画書を提出しつつ、

   毎年、経営状況を報告することを前提に、その都度リスケの延長・見直しを認めてもらう

   「暫定リスケ」を行って、経営状況が安定するまで、返済額を軽減してもらう。


以上が、一般的な過剰債務の整理方法ですが、この他にも、「第二会社方式」を使った

債務整理や、裁判所での「特定調停」による債務整理などがあります。 これらの方法は、話し合いによって債務整理を進めるので「私的整理」と呼ばれます。 そして、この私的整理でも債権者と話し合いがつかないときには、「法的整理」

会社更生や民事再生など)の法的な手段による整理手法があります。



8.連帯保証について


会社が金融機関から借入を行う際に、多くの場合、経営者個人やその家族が、会社の借入金の

債務保証を求められることがあります。


連帯保証とは、保証人が、主たる債務者(本来の債務者である会社)と連帯して債務を負担することをいいます。債権者と保証人とが書面による保証契約を締結することによって成立します。


保証人は、主たる債務者が債務を履行しないときに、その債務を履行する責任を負います。


この場合、普通の保証人は、債権者に対して、


① まずは主たる債務者に対して、債務履行を催告すべきと主張すること(催告の抗弁権)ができる

② 主たる債務者に弁済の資力があって容易に執行できると証明したときには、

 まずは主たる債務者の財産について執行すべきと主張することができる(検索の抗弁権)


ことが認められています。


しかし、連帯保証の場合にはそのような主張をする権利(抗弁権)がなく、

債権者が要求すれば、主たる債務者と区別されること無く債務を履行しなければなりません。


融資取引や不動産取引において、単に「保証」という場合には、実際には「連帯保証」であるこ

とが多いです。


経営者が会社の借入金の連帯保証人になるのは、事業を行う代表者として首肯しえますが、

経営者個人の資産がそれほどない場合などには、妻や子供といった家族にまで、

金融機関は連帯保証人になることを要求することが少なくありません。


また、事業を後継者に承継する場合に、代表者変更を行うことにより、会社の借入金の

連帯保証人が、現経営者から後継経営者に移るのが一般的です。


この連帯保証制度が、とくに過剰な債務のある会社の事業承継の障害になることが

非常に多いのです。


2013年に公表された「経営者保証に関するガイドライン」は、そのような連帯保証問題解決の

ために作成されましたが、その適用において、実務的に認められるケースはそう多くはありません。


結果として、連帯保証問題を解決するためには、その根幹にある、会社の過剰な債務の整理

に着手しなければならないということになります。



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