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事業承継の進め方㉙ 事業計画の策定3

こんにちは。所長の山本誉です。

今回も、このブログでは、事業承継、経営改善のための、「事業計画の具体的策定方法」、

とくに「損益計画」の策定について説明していきたいと思います。



(4) 損益計画の策定

損益計画の策定方針が決まったら、直前期の実績数字を入れた上で、向こう3年から5年間の

中長期計画を策定します。ここではA社の損益計画を図表3のように策定しました。


直前期の数字を入れるのは、これまでの実績数値の確認と、中長期計画が、

これまでの実績数値とあまりにも乖離していない(非現実的でない)ことを確認するためです。


また、損益計画の各費目の改善状況が把握しやすいように、売上高構成比を入れて策定し、

各計画年の数値の適正性を確認しながら損益計画を策定します。


A社の損益計画の概要は、多様なイベントの実施によるリピート顧客の増加、HP、SNS等の

ITを活用した新規顧客の集客により売上高をアップさせるとともに、


メニューの改善による原価率の改善、さらには、役員報酬の減額を含む人件費などの

経費の削減を行って利益を拡大させるというものです。


また、毎年大規模修繕(建物付属設備)を行いながら設備の改装による集客力の向上を図りつつ、

計画4年目には賃借している事業用不動産を新規借入により購入する計画です

(そのため、計画5年目の地代家賃が発生していません)。 







































なお、図表3の法人税等および当期純利益を計算するためには、

税務上の繰越欠損金を考慮しつつ、法人税等を計算しなければならないのですが、

そのためには、図表4の「タックスプラン」を策定して法人税等を計算します。

ここでは、法人税等の実効税率を30%として計算しています。



















また、新たな設備投資計画がある場合(図表5参照)、当該設備投資に伴って発生する

減価償却費や資産売却等の損益は、損益計画、法人税、純資産に影響を与えます。
















そのため、新規の設備投資に伴う減価償却費は、前掲図表3損益計画の「設備投資減価償却費」

の項目に算入し、前掲図表4のタックスプランに反映させます。


また、資産売却等の損益は、前掲図表3損益計画の「特別利益」または「特別損失」に算入し、

前掲図表4のタックスプランに反映させます。


損益計画の策定で重要なのは、

・「成り行きシナリオ(通常予測される損益予測)」

・「悲観的シナリオ(想定される最悪の場合の損益予測)」

・「楽観的シナリオ(想定される最良の場合の損益予測)」

の3つのシナリオに基づく損益計画を策定し、各々の損益計画を比較検討した上で、

取り得る施策を実施した場合に、合理的で実現可能と思われる損益計画を採用することです。


この3つのシナリオの中で重要なのは「最悪のケース」です。


損益計画を策定する場合、とくに経営者には、楽観的予測・希望的観測が入りがちで、

上手くいかない場合やリスクをあまり考慮せず、「バラ色の事業計画」を策定しがちでし。


しかし、ほとんどの場合、そう都合良く事業は進まないものであり、

次第に事業計画が「絵に描いた餅」となり、実効性を持たなくなってしまいます。


そのため、最悪のシナリオを想定しておき、事業がどこまでなら耐えられるかを把握した上で、

合理的で実現可能と思われる損益計画を検討し、策定することが重要なのです。



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