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事業承継の進め方㉗ 事業計画の策定1

こんにちは。所長の山本誉です。

今回から、このブログでは、事業承継、経営改善のための、

「事業計画の具体的策定方法」について説明していきたいと思います。



1.事業戦略をもとに事業計画を作成する

前回まで、自社の取るべき事業戦略について説明させていただきましたが、

今回は、それに「数値計画」を加えた事業計画の作成方法を説明していきたいと思います。


事業計画を作成する上で重要になるポイントは、


・現状の財務情報

・最低手元資金(キャッシュ・ストック)

・目標FCF

・金融支援策(追加融資、条件変更など)


の4つ、つまり、現状の財務情報と、3つの計画情報です。


現状の財務情報をもとに、3つの計画情報を作成していくのが、事業計画のポイントとなります。

それでは、具体的な事業計画の策定方法を説明したいと思います。



2.「基準月商及び最低手元資金算定表」(第一表)の策定

(1) 通常の場合

事業計画の策定にあたっては、第一に、会社の最低手元資金がいくら必要なのかということを

算定しておくことが必要です。これは超短期の安全性確保(倒産防止)のためです。

そのために「基準月商及び最低手元資金算定表」(第一表)を策定します(図表1参照)。


基準月商および最低手元資金は、非常に重要な経営指標であり、

事業計画策定においては極めて重要です。


ここでは、あるA社(飲食業)を仮定して具体的な金額を当てはめながら、

図表1を見ていくこととします。


今、このA社は、①の直近1年間の販管費250,000千円、②の直近1年間の支払利息3,500千円、

③の直近1年間のその他必要支出額11,000千円(うち必要設備維持投資額6,000千円、

個人借入金返済5,000千円)、⑤の直近1年間の売上総利益率を67.0%であるとすると、

基準月商⑥は、32,898千円であると算定できます。

































さらに、この企業は最低手元資金として基準月商の3か月分が必要だとすると、

最低手元資金は98,694千円であると算定されます。


この結果、A社は最低手元資金98,694千円を「キャッシュ・ストック」として、

留保していくことが必要だということになります。


もし、そのために必要であれば、金融機関へ条件変更を申し出て、

借入金返済額の減額交渉等を行うことにより資金流出を減らしたり、

また、可能であれば不要な資産を売却して資金を生み出すなどの施策を講じる必要があります。



そして、中長期的には最低手元資金を留保できるだけのFCFを設定することが、

目標FCFとなります。この目標FCFを策定する上で必要となるのが、

後ほど述べる「損益計画及び資金計画(CF計画)」(第二表)です。


なお、ここで、最低手元資金を考えるにあたって、「運転資本(運転資金)」についても

触れておきたいと思います。


運転資本は、企業が日々のビジネスを運営していくに際し、

仕入や販売といった営業活動に係る「フロー」としての資金がいくら必要なのか

という視点から検討されるものです。


これに対し、天災や事故などにより事業休止(正常営業循環活動の停止)を

余儀なくさせられた場合、企業が倒産しないためには、最低限度の手元資金がいくら必要なのか

という「ストック」の視点から検討されるのが最低手元資金なのです。


しかし、運転資本については、手元資金を基準月商の3か月分以上ストックしておけば、

フローとしての運転資金が一時的に増加した場合にも、通常の場合には対処が可能です。


したがって、最低手元資金として基準月商の3か月分以上ストックしておけば、

一般的には、運転資本も十分カバーできると考えられます。


(2) 新型コロナなど大規模災害へ対応する場合

次に、新型コロナや大規模災害など、長期間にわたって営業が困難な状況が続くと

思われる場合には、手元資金をどのように考えるべきでしょうか。


結論から言えば、「手元資金をありったけ確保しておく」ということになります。

可能であれば、特別融資などによる借入や、不要資産の処分、コスト削減努力によって、

手元資金を1年~2年分は確保しておくのが望ましいです。


当面1年~2年分の手元資金が確保できれば、事態の成り行きを見守りながら、

頑張って事業を継続するのか、あるいは業種転換・新規事業を始めるのか、

さらには、廃業するのかという、「打ち手」を考える時間と資金的余裕ができるからです。


事業は継続するだけが良いことではありません。

社会環境の変化や後継者不足により、行っている事業が立ち行かないと判断されれば、

傷の浅いうちに廃業するのも、その後の経営者や社員の人生にとってプラスになることもあります。

その意味では、廃業を決めることも、決してネガティブな選択肢ではないことを申し添えたいと

思います。




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