おはようございます。所長の山本誉です。
首都圏では今日事態が今日から解除されて、新たな生活が始まりますね。
緊急事態宣言が解除されても、感染拡大防止を意識することは当然ですが、
社会や経済活動が少しずつ、明るさを取り戻してほしいと思います。
さて、今回は、キャッシュ・フロー計算書(CF計算書)を「キャッシュ・フロー相関図」(CF相関図)で考えるということについて前回分類したパターン(下図)にしたがって、
その経営改善方針の立て方(方向性)について説明したいと思います。
キャッシュ・フロー計算書では、
営業CF、投資CF、財務CF、手元CFは、図表1のように表示されます。
しかし、このようなキャッシュ・フロー計算書の表示方法では、
各CFの相関関係が理解しづらいように思われるのです。
同様の例として、損益計算書において、三分法により計算された商品の売上原価は、
図表2のように表記されます。
この図表2の売上原価の表記方法の場合も、
期末商品(在庫)と売上原価の関係等が視覚的・直感的に把握しづらいくなっています。
そこで、期末在庫や売上原価を算定するのに簿記でよく使われるのが、
とくに仕入勘定の「ボックス図」(図表3)です。
図表3の仕入勘定のボックス図を見れば、
期首に確定している期首商品棚卸高と、期中に測定される当期商品仕入高の合計①は、
期中に確定している(1,100)ため、②の期末商品棚卸高を期末に測定した時点で、
①と②の差額から売上原価はおのずと算定できます。
つまり、期末商品棚卸高が150であれば、売上原価は1,100-150=950となります。
また、期末商品棚卸高が150より少なければ、図表3の期末商品棚卸高の部分が小さくなり、
その分売上原価が多くなることがわかります。
そのことは、ボックスの右側の「売上原価」と「期末商品棚卸高」の境界線(黒色矢印部分)が、期末商品棚卸高の金額によって上下に動く(つまり増減する)相関関係にあることを視覚的に示すものです。
この図から、期末の在庫金額が大きくなれば売上原価が小さくなり、期末の在庫金額が小さいと、売上原価が大きくなることが図形的・視覚的に理解できます。
仕入勘定のボックス図は、簿記の初学者にとっては売上原価を計算するツールであり、
会計の専門家にとっては、在庫と売上原価の関係を瞬時に想起させるツールであす。
それでは、キャッシュ・フロー計算書についても、この仕入勘定のボックス図のように図形化して、
各CFの相関関係を視覚的に理解できるようにできないだろうかと思って検討したのが、
図表4の「キャッシュ・フローの相関関係」であり、それをもとに作成したのが、
図表5の「キャッシュ・フロー相関図」です。
さっそく、キャッシュ・フロー相関図(CF相関図)を使って、
各キャッシュ・フローの相関関係を分析してみましょう。
図表5のCF相関図を見ると、
③のFCFを二分して得られる、④の財務CF(借入返済)と⑤の手元CFとは、
基本的に相反関係(どちらかが増えるとどちらかが減る)にあることがわかります。
また、③のFCFは、②の設備投資等を行うと減少し、資産等の売却により増加します。
そのことから、④の財務CF(借入返済)は、⑤の手元CFが同額であれば、
設備投資等を行うと返済額が少なくなり、資産売却等を行うと返済額が多くなることを示しています。
さらに、②の設備投資等資金と⑤の現金預金等増減額を同時に確保するためには、①の営業CFの増加以外に、④の財務CFを増加(新規借入)して、キャッシュ・イン・フローを増加させる方法もあることがわかります 。
このように、図表5のキャッシュ・フロー相関図を利用すれば、
営業CF、投資CF、FCF、財務CF、手元CFの各相関関係が視覚的、感覚的に把握しやすくなり、
企業の経営状況がどのような状況であるのか理解しやすくなります。
そこから、これまでに企業がどのような経営を行ってきたのか?
その結果としての現状の経営課題は何なのか?
そして、現状の経営課題を改善するためには、どのような施策を講じれば良いのか?
という点について、「キャッシュ・バランスの改善」という視点から示唆を与えてくれる、
有用なツールになると思うのです。
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