こんにちは。所長の山本誉です。
新年度に入り、春らしい陽気な季節になりましたね。 まだまだ、コロナの感染収束がいつになるのか見込めない状況ですが、 季節も春になったように、いつまでも冬ということはありません。
飲食店等の方々は、本当に大変な苦節の時期だと思いますが、 「必ず春は来る」ということを信じて、一緒に頑張りましょう!
さて、今回から、事業承継にあたって、後継者に要求される「金融知識」について、
説明していきたいと思います。
1.金融と資金調達
会社が事業を経営するためには、資金が必要となります。
事業が拡大して設備投資が必要になったり、事業を継続するための運転資金が必要になると、
資金を集める(資金調達する)必要が生じます。
資金を調達する方法は、大きく2つに分けられます。
① 投資家などから調達する「直接金融」による調達
② 金融機関から調達する「間接金融」による調達
(1) 直接金融
お金を必要とする相手に直接お金を出資するのが「直接金融」です。
主な直接金融の方法は、株式や債券を発行することで、「投資家」に出資をお願いします。
企業は株式や社債(債券)を発行し、それらを投資家に購入してもらう(「出資」してもらう)ことで
資金調達を行います。そしてその企業が利益を出したときには「配当金」などの形で、
投資家に利益の一部を還元します。
中小企業の場合は、ベンチャー企業のような上場を目指す企業を除き、
一般個人の投資家から会社が出資を募るのがほとんどです。
お金が必要な相手に直接資金が渡ることから「直接金融」と呼ばれています。
① 会社側から見た直接金融のメリット
・出資を受けた資金は返済不要である
(社債は返済を要する点で間接金融に近い)
・中小企業の場合、配当を出す出さないは会社側の判断で決められる
(社債の場合は、約束した利息を投資家に支払う必要がある)
② 会社側から見た直接金融のデメリット
・出資に伴い投資家は株式を有する株主となるので、株式数(議決権)が多くなると、
会社側は自由な意思決定が行いにくくなり、最悪の場合経営権を失ってしまう
(2) 間接金融
金融機関等からの借入による資金調達が「間接金融」です。
金融機関は、預金者から集めたお金を、資金を必要としている企業などに貸し出します。
このように、預金者からの資金が、金融機関などの第三者を通じて、企業に資金が渡ることから、「間接金融」と呼ばれます。
そして、金融機関から資金を調達した企業は、「返済条件」にしたがって、
調達した資金を返済していきます。
① 間接金融の形態
イ) 無担保・無保証融資
これは、文字通り、金融機関から資金を借りるにあたって、経営者や会社が担保を提供したり、
借入の個人保証(連帯保証など)をする必要のない融資です。
会社・経営者は、資金が返せなくなったら、それ以上返済責任を問われることはありません。
この無担保・無保証融資の例としては、日本政策金融公庫の「創業者融資」や、
新型コロナに伴う「新型コロナ特別融資」などが挙げられます。
借入の形態としては、この無担保・無保証融資が、会社や経営者にとっては最も好ましいのです。
ロ) プロパー融資
この融資は、金融機関が独自でリスクを負って融資を行うというものです。
日本政策金融公庫の融資は、国の資金を使って融資するものであり、プロパー融資しかありません。
民間金融機関の場合には、金融機関独自のリスクで融資を行います。
このプロパー融資は、
会社や経営者が担保を提供して行うもの、
担保は提供しないが経営者が「連帯保証」を行うものに分けられます。
ⅰ) もし、借入金の返済ができなくなった場合、担保提供していた資産は売却して返済に
充てられるます。
担保提供していない場合や、担保資産を売却しても返済額に満たない場合には、
一般的に、「サービサー」という債権回収会社に貸付債権は売却(代位弁済)されます。
代位弁済後、サービサーは金融機関に代わって債権者となります。
ⅱ) 経営者や家族が「連帯保証」していれば、その個人資産を差押えされ、
その後、売却されて返済額にあてられることとなります。
ハ) 保証協会付融資
この融資は、民間金融機関が会社に貸付を行うにあたって、各都道府県の信用保証協会
(大都市にはさらに市の信用保証協会がある)が、信用保証、つまり、会社が金融機関に
返済ができなくなった場合に、会社に代わって金融機関に弁済するという保証を付けた融資です。
保証協会付融資を使う場合、
信用保証協会には定められた保証料を、利息とは別途支払います。
ⅰ) もし、会社が金融機関に返済できなくなり保証協会が返済を肩代わり(代位弁済)した場合、
その貸付債権については、保証協会が金融機関に代わって債権者となります。
しかし、保証協会に返済を肩代わりしてもらっても、借入金は消滅せず、保証協会が
借入金の返済を要求することになります。
ⅱ) 保証協会付融資を受ける際に、経営者や家族が、担保提供や連帯保証をしていれば、
代位弁済後、保証協会が担保を売却したり、連帯保証している経営者や家族の個人資産を
差押え、その後売却して、返済額にあてられることとなります。
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