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執筆者の写真Homare Yamamoto

事業承継の進め方㉝ PDCAサイクルの回し方

こんにちは。所長の山本誉です。

今回のブログでは、事業承継、経営改善のために策定した「事業計画」をもとに、

PDCAサイクルを回していく方法について説明したいと思います。



6.PDCAサイクルを回す

(1)事業計画を実施する

会社は、事業計画(Plan)を策定したら、あとはアクションプランにもとづいて、

ひたすら目標達成に向けた具体的な行動(Do)を、全社総力を挙げて行います。


そして、その行動の成果を、定期的に計画と比較・分析して評価します(Check)。

そこで、アクションプランの有効性や行動内容についての改善点が明確になれば、

アクションプランや行動内容を改善して、再び目標達成に向けて行動します(Action)。

これが、いわゆる「PDCAサイクル」を回すということです。


PDCAサイクルを上手く回すポイントは、以下のとおりです。


① 事業計画が合理的かつ実現可能なものであること。

② アクションプランの方向性が、計画達成に有効であること。

③ 行動がアクションプランに沿ってしっかり行われること。

④ 計画と行動結果の評価をしっかり行うこと。そして、今後の計画達成に向けた、

  有効な 行動が取れるような改善方策を見出すこと。

⑤ PDCAのサイクルが上手く回っているかたえず確認すること。



(2)重要指標をたえずチェックする

事業計画のアクションプランにしたがって、具体的な行動を実施し始めたら、

とくに事業計画に盛り込まれた「重要指標」をたえずチェックしながら、

その達成を意識して日々行動します。アクションプランの行動の先には、

「重要指標」の目標達成があり、その目標達成が事業計画を実効的なものにします。

そのことをたえず意識し、重要指標目標をチェックし続けながら行動することが重要です。



(3)計画と実績の比較による活動実績の評価

重要指標の目標達成に向けて、行動を開始したら、定期的に計画と実績を比較し、

活動実績を評価(モニタリング)します。


ここで、重要なことは、計画と行動結果の評価をしっかり行うこと

そして、今後の計画達成に向けた、有効な行動が取れるような改善方策を見出すことです。


活動実績の評価は、顧問税理士や外部専門家を交えて、取引先や金融機関などの

外部利害関係者にも評価を求めるのが望ましいです。


その理由は、活動実績の自己評価(自社評価)というのは「甘くなりがち」であり、

改善方策も「漠然としたいい加減なもの」になりがちだからです。


そうならないようにするためには、客観的かつ利害関係のある、顧問税理士や外部専門家、

取引先や金融機関などの外部関係者から評価目線を聞き、その意見を尊重すべきなのです。


他人のことは良くわかる人でも、意外と、自分のことになると途端にわからなくなる人が

ほとんどだと思います。それは、企業も同じです。

そこには、「先入観」や「固有の価値観」がすでに確立されているからです。


そのためにも、定期的に外部関係者に対して、自社から進んで活動実績の評価を求める

べきです。そこから、自社のみでは思いもかけなかった改善方策がもたらされることも

少なくありません。



(4)改善点をアクションに反映させる

計画と実績の定期的な評価により、その都度改善点が出てくれば、

その改善点は以降の行動に反映させます。

 

ここで多いのが、改善点は見いだせても、その改善の行動をわざと取ろうとしない、

または、放置したままにしているというケースです。


この理由は、いくつか考えられます。例を挙げると、


 ① 経営者のリーダーシップ不足

 ② 社内の「既成概念(社風)」が改善に抵抗する

 ③ 改善行動を取ることが社内の特定の関係者にとって不利になる

 ④ 改善のための行動負担が重すぎる

 ⑤ 外部利害関係者の自社に望むベクトルが違う


などです。


①の経営者のリーダーシップ不足は、一番深刻です。

なぜなら、経営者のリーダーシップが強力であれば、

②~⑤の問題はすべて解決できるからです。


したがって、経営者が明らかにリーダーシップ不足である場合には、

経営改善も進まず、事業も発展しません。

経営者を代えるか、それが無理なら、現状のまま成り行き経営に任せるのみとなります。


②の社内の既成概念(社風)ですが、これは、長年、年功序列が行われてきた企業に

おいて、成果主義を採用する場合などを想定すれば理解しやすいと思います。


こうした場合、経営者の「英断」によって既成概念を破壊するしかありません。

しかし、その経営者自身が、年功序列信奉者であれば、その先の改善行動はありません。

経営者の意識を変えるためにも、外部利害関係者等の意見は重要なのです。


次に、③の改善行動が社内の特定の関係者にとって不利になる場合とは、

特定の部門を廃止したり、他の部門と統合したりするような場合が想定されます。


廃止される部門の部門長や部門に所属する者は、さまざまな理由を並べ立てて、

自部門の必要性を主張し続けます。

「全社利益」のためでなく、「自部門の利益」のためです。

この場合も、最後に決断を下すのは、経営者ということになる。


④の改善のための行動負担が重すぎるとは、例えば、製造業などで、

原材料や部品在庫などが大量にあり、その在庫の処分にかなりの時間と労力を

伴うような場合です。これは、「経済合理性」という問題に行きつきます。


しかし、全社的な事業計画の遂行上、改善行動を取らなければ計画目標が達成できない

ということであれば、「経済合理性はある」ということになります。

現場の部門長や部門の者が、いかに不平不満や時間と労力の問題を持ち出そうと、

経営者のトップダウンで行うべきです。


最後に⑤の外部利害関係者の自社に望むベクトルが違うという場合とは、

計画が上手くいかずに資金がますます不足してきたような場合に、

ある金融機関は返済条件を緩和して支援してくれると言ってくれているのですが、

別の金融機関が、担保不動産を売却すると言ってきたような場合です。


このような場合には、経営者や顧問税理士・外部専門家が音頭を取って、

「バンクミーティング」を行い、「改善の落としどころ」を模索するしかありません。

その場合でも、最終的な落としどころを見つける鍵になるのが、

経営者の事業に対する積極的な姿勢です。すべての者は、経営者を見ているのです。


事業計画のPDCAを上手く回すためには、経営者と外部関係者との、

普段からの「リレーションシップ」が、非常に重要なのだといえます。



(5)実績とのズレが大きければ計画の修正を検討する

次に、事業計画策定時には想定もできなかったような、

・外部環境の変化(産業構造や生活様式の変化など)

・内部環境の変化(社内のキーパーソンの離職や設備のトラブルなど)

が起こり、計画目標と実績のズレが大きくなれば、いったん計画そのものを

修正することも検討します。


外部環境や内部環境の変化に対応できる施策が見つかれば、計画の修正を行わなくても

良くなる場合もありますが、そのような施策を見出すことが困難な場合には、

合理的で実現可能なレベルに計画の修正を検討します。


その場合、外部利害関係者にも計画修正を検討するに至った経緯を事前に説明し、

あらかじめ理解を得ておくことが重要です。


 

(6)「予実分析」から「予予分析」・「未来志向型経営」へ

「予実分析」というのは、前項のPDCAサイクルでも説明した、

目標(予算)と(行動)実績の分析(評価:Check)であり、

そこから、目標達成に向けた改善行動を取るために行うものでした。


この「予実分析」というのは、予算という固定した所与の前提があり、

その達成に向けた行動を実行していくためには有効な手法であり、

現在でも多くの企業で行われています。


しかし、「新型コロナ」や「大規模災害」などは、予算という所与の前提そのものが

大きく変動し、あるいは崩れ去ることを証明しました。


そして、外資系企業や上場企業において、重点を置いているのが、

「予実分析」以上に「予予分析」という考え方です。


「予予分析」という言葉は、事業計画として当初策定された予算(目標)と、

今後、その予算の前提が変動する可能性を予測分析するという、

「予算-予測分析(予算予測差異分析)」を指しています。


この「予予分析」は、今後、AI技術の進展により、機械学習やビッグデータの活用が

進めば、中小企業においても容易に活用できる時代が来るかもしれないと思います。


ここで重要なことは、過去を振り返って反省することよりも、

今後、経営に影響を与える事象を予測する「未来志向型」経営なのです。


いつ終息するのか誰にも出口の見えない「新型コロナ」は、

中小・零細企業の経営者に対しても、業種・業態転換、新規事業、多角化などの

「未来志向型」経営に舵を切ることを突き付けたように私には思われます。


今後は、「未来志向型」経営の中でのPDCAサイクルを回すことが、

経営者の重要な仕事になるように思われます。



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